なぜ HTMLファーストな a-blog cms は長期運用に優れているのか

2025年12月01日 #ablogcms#HTML#HTML-First

a-blog cms Advent Calendar 2025 の初日ということで、これから毎日 a-blog cms 関連のブログ記事がアップされる楽しい 25日がスタートです!

長文なので、読むのが面倒な人は、スライドポッドキャスト で、どうぞ!

最近、ウェブサイトのコピーに「HTMLファーストな」という言葉を加えました。この言い回しを選んだのは、私たちがずっと大切にしてきたコトを、もっと分かりやすく伝えたいと感じたからです。

最近の Web サイト制作では、短期的な開発効率や最新技術の採用 が話題になることが多いですよね。React や Vue.js といった JavaScript フレームワーク、あるいは Headless CMS を使った構成は、確かにスピーディに開発でき、拡張性も高いアプローチです。

しかし、一方で Web サイトの運用は「今つくる」だけで終わらず、数年後も安定して運用できるかどうか がとても重要です。特に企業サイトや自治体、教育機関など、5 年、10 年と使い続ける前提の Web サイト では、トレンドよりも「維持しやすさ」「担当者が変わっても困らない」「無駄な改修を生まない」ことが本当に大切です。

実際、ライブラリのアップデートや外部 API の変更をきっかけに、まるごと改修が必要になってしまうケースは後を絶ちません。結果として、運用コストが膨らみ、担当者の負担も増えてしまうわけです。

その点で、a-blog cms が採用してきた HTML ファースト というアプローチは、流行に左右されず、長期運用を前提とした非常に堅実な思想だと感じています。

HTML ファーストとは、Web の基本である HTML を中心にして、テンプレートやサイト構造を HTML と CSS で完結できるようにする考え方 です。フロントエンドの技術がどれだけ進化しても、HTML が Web の基盤である限り、構造が破綻しない。この強みが、長期運用で大きく効いてきます。

a-blog cms は 2009 年のリリース以来、この HTML ファーストを軸に開発を続けてきました。その結果、10 年以上動き続けている実運用サイト もたくさんあり、「更新が止まらない CMS」として企業や制作会社から高い評価をいただいています。

ここからは、この HTML ファースト思想が、なぜ長期運用に強いのかを、技術・運用・保守の観点から整理していきます。

1. HTML ファーストとは何か

まず、HTML ファースト の考え方について、少しわかりやすく整理してみます。

HTML ファーストとは、「サイトを構成する最初の土台を HTML で作る」ことを前提とした設計思想です。テンプレートの基盤は HTML。それに CSS や、必要最低限の JavaScript を足してサイトを組み立てていく、という非常にシンプルな考え方です。

a-blog cms では、この考え方がシステムのコアに組み込まれています。記事一覧、フォーム、カテゴリー構造など、CMS の出力はすべて HTML に直接展開する形で実装される ため、テンプレート側は「いつもの HTML コーディング」の延長で作れます。

この仕組みには、以下の特徴があります。

(1) コードが読みやすく、構造が理解しやすい

a-blog cms のテンプレートは、普通の HTML ファイルです。見出しがどこにあって、どこからどこまでが一覧ループなのか、HTML を見れば一目瞭然です。そのため、制作会社が変わったり、担当者が入れ替わったりしても、初見で読み取れるレベルで構造が明快。引き継ぎのしやすさは圧倒的です。

(2) フレームワークに振り回されない

HTML が主体なので、特定の JS フレームワークやビルドツールに依存しません。後から jQuery を足すことも、Vue.js を加えることも、htmx で部分更新を導入することもできます。でもそれらは「オプション」であって「必須」ではありません。つまり、流行の変化に引きずられてサイト全体を作り直す必要がない のです。

(3) HTML / CSS で完結した開発が可能

多くの CMS はテンプレートに PHP や独自構文を使うため、デザイナーが直接触りづらいことがあります。しかし a-blog cms の場合、テンプレートは HTML に数種類の変数記法を添えるだけ で成立します。デザイナーやフロントエンドエンジニアの専門領域がそのまま CMS テーマ制作に活かせるため、制作フローが分断されません。

HTML ファーストは「昔ながらの作り方」ではなく、むしろ「Web の本質に立ち返った作り方」だと思っています。次の章では、この設計がなぜ長期運用に効くのか具体的に見ていきます。

2. 長期運用を支える 4 つの要素

a-blog cms が長期運用に強い理由は、単に CMS の機能が多いからではありません。HTML ファーストを軸に、運用・保守のしやすさを徹底的に設計しているから です。ここでは、次の 4 つのポイントから整理してみます。

(1) 技術変化に強いテンプレート構造

HTML の最大の強みは「互換性」です。Web が誕生してから 30 年以上たっても、HTML は基本的な互換性を保ったまま進化しています。a-blog cms のテンプレートが HTML ベースであることは、時代が変わってもテンプレートが壊れない ことを意味します。数年後にデザインを刷新したとしても、既存の HTML 構造を土台にすれば、大掛かりな改修をせずに済む。これが 10 年以上動き続けるサイトが多い理由のひとつです。

(2) 軽量で高速、そして壊れにくい

HTML ファーストは、サーバー側で完成した HTML を返すため、とにかく速い。SPA のようにクライアント側で画面を組み立てる必要がないので、初期表示は常に安定して高速。通信状況に左右されにくく、トラブルシューティングも容易です。さらに、テンプレートとデータベースが分離されているため、テンプレート修正がシステムに影響しない のも大きなメリットです。

(3) 担当者が変わっても安心して引き継げる

運用が何年も続くと、担当者の交代は必ず起こります。そのときに問題になるのが、「前任者にしか分からない実装」です。HTML ベースのテンプレートであれば、後任の担当者が HTML と CSS を読めればすぐに追いつけます。属人化を防ぎ、運用を止めない構造が実現できます。

(4) セキュリティとアップデートが継続しやすい

長期運用で最も怖いのがセキュリティです。a-blog cms は、コアプログラムをユーザー側が改変できない仕組みを採用しており、システム破損や脆弱化を防ぎつつ、継続アップデートが可能です。テンプレート修正がシステムに干渉しない設計のため、保守面でも安心して更新できます。

以上の 4 点が、a-blog cms が長期運用に強いと言われる理由です。「一度作って終わり」ではなく、「作ったあともずっと成長させられる CMS」 としての価値がここにあります。

3. JS ファーストとの比較

ここからは、HTML ファーストと、最近主流の JS ファースト(Headless / API ドリブン開発) を比較してみます。目的に応じて選ぶべき構成は変わるので、優劣ではなく「相性の違い」として捉えていただくのが良いと思います。

(1) 開発初期の速さ vs. 持続性

JS ファーストは、React や Next.js のおかげで初期開発のスピードは非常に速いです。ただしその一方で、バージョン更新の影響が大きく、数年単位の保守が難しい という課題も抱えています。HTML ファーストな a-blog cms は初動のスピードでは勝てない場面もありますが、長期運用では圧倒的に優位 です。

(2) 表示速度の安定性

JS ファーストは、初期表示で「空白時間」が発生することがあります。クライアント側で画面を組み立てるため、通信状況によってブレが出やすいのです。対して a-blog cms は、サーバー側で HTML を組み立てて返すため、初期表示が常に速くて安定 しています。信頼性を求められる企業サイトや自治体サイトでは、この安定性が強い武器になります。

(3) 必要なスキルセットと運用継続性

JS ファーストは、運用段階でも API やビルド環境の知識を必要とします。運用担当者が必ずしもエンジニアとは限りません。一方 a-blog cms は、HTML / CSS が分かれば運用ができる ため、担当者が変わっても引き継ぎやすく、制作会社が変わっても対応できます。

(4) コスト構造

Headless CMS は、API 通信・CDN・ホスティング・ビルド環境など、複数サービスの組み合わせが前提のため、運用コストが積み上がりがちです。a-blog cms はオールインワン構成で、長期的な運用コストを抑えやすい のが特長です。

JS ファーストは「最新体験を素早く届けたい」場合に向いています。一方で HTML ファーストは「長く安定して運用したい」場合に最適です。a-blog cms は後者を強みにした CMS として、企業や団体の長期運用にしっかり応えています。

4. 導入企業での実績と継続利用例

a-blog cms は 2009 年のリリース以来、企業、自治体、教育機関、医療法人など多様な領域で採用されています。その中で、5 年以上、さらに 10 年以上継続して運用されているサイト が多数あります。途中でデザイン更新はあっても、CMS 自体を乗り換える必要がない。これが HTML ファースト思想の実用性を示しています。

(1) 企業サイト:10 年以上動き続ける CMS 基盤

大手メーカーのコーポレートサイトでは、2010 年代に a-blog cms を導入し、その後複数回のリニューアルを経ても CMS は継続して利用されています。担当者が何度も交代していますが、HTML ベースの構造のおかげで 新人でも数日で更新に慣れる という運用体制が実現しました。社内で「自走できる CMS」として信頼されています。

(2) BtoB サービス:長期的なマーケティング運用に最適

BtoB 企業では、リード獲得のための継続的な情報発信が重要です。a-blog cms はカテゴリ整理、事例ページの追加、フォームの改修などを担当者自身で行えるため、外注コストを抑えつつ運用を続けられます。HTML ベースの構造は、数年スパンのマーケティング施策の変更にも柔軟に対応できます。

(3) 教育・医療・団体:組織変更に強い CMS

大学や医療法人では、担当者の異動や運用体制の変更が頻繁にあります。a-blog cms は 属人化しない構造 のため、関係者が変わっても更新が止まりません。デザインとデータが明確に分かれているため、リニューアル時も既存データを保持したまま新デザインに移行できます。

(4) オウンドメディア・採用サイト:軽快な更新体験

記事投稿のしやすさやプレビューの速さにより、広報や採用担当者でも直感的に更新できます。記事数が増えても表示が安定し、長期的な情報発信の基盤 として多くの企業に選ばれています。

ウェブサイトに掲載されている多くの事例

これらの事例は共通して、「CMS が壊れず、運用が止まらないこと」が組織にとってどれだけ重要かを示しています。

5. まとめ

Web サイト運用の本質は、公開してから 安定して更新し続けられるかどうか にあります。技術の変化が激しい今、特定のフレームワークや外部サービスに依存した構成は、いずれ必ず大きな改修や運用負荷として跳ね返ってきます。

a-blog cms が採用する HTML ファースト は、そうした短期的な流行とは一線を画し、Web の本質である HTML を中心に据えた設計です。HTML と CSS が理解できればテンプレートを保守でき、バックエンドに影響を与えずに拡張できる。このシンプルさが、10 年先も安心して使い続けられる CMS を実現しています。

また、a-blog cms は HTML ファーストでありながら、必要に応じて htmx や Alpine.js を使った段階的なモダン化 にも対応できます。静的サイトから動的コンテンツ、SPA 的な体験まで、同じ CMS 基盤で展開できる柔軟性があります。

結果として a-blog cms は、

  • 長期運用の安定性

  • 軽快で安全な更新体験

  • 担当者交代でも困らない引き継ぎのしやすさ

を兼ね備えた、実用的で持続的な CMS として選ばれ続けています。

HTML ファーストは、古い考え方ではありません。むしろ、未来の変化に振り回されず、組織とサイトの成長を支えるための設計哲学 です。

技術が進化し続けるこれからの時代こそ、HTML ファーストという選択は「長期運用に強い Web サイト」を実現する確かな基盤になるはずです。

おまけ

今回、NotebookLM のインフォグラフィック 作成機能を利用して画像を用意しました。

この文章をスライドにしたり、ポッドキャストにしたり、動画にしたりすることも簡単にできる世の中になりました。

スライド

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